野営車でいこう(VWT4版)

旧野営車エクスプローラ 2009〜2016年の記録

鮨という引き算



岡山でお洒落そうな鮨屋「鮮寿」に行ってみた。食べログでは総合で高得点ながら、コメントを読むとたまに厳しい点を付けている人もいる。行ってみて理由が頷けた。見るからに装飾的、それぞれの席にある三段の皿には醤油、酢醤油、岩塩。手で食べることにこだわって指を洗う椀、そのためのおしぼり。そういうのは、女性などにはいかにも拘りの演出として好意的に受け取られているようで、女性客やカップルが多かった。


しかし、江戸前の鮨の美学からすると、あきらかに装飾過多。現在の主流としての鮨屋のかたちを思い起こす。緊張感のある引き算の空間に余分なものは一切なく、ネタは木箱に入っている。そして、シンプルに差し出される鮨二貫。ただその素材の良さ、仕事の確かさだけを感じてもらうだけのために、邪魔なものは引き算していたんだ、ということを、この店に来て逆に感じる結果となった。京都には海藻や練り物や佃煮的なもので味付けをするなど手の込んだ創作鮨もあり、それはそれで楽しませてくれる。ここでは何かしらトッピングしているし、ネタは悪くはない。何か拘りを演出したい気持ちはわかる。しかし、当然のことながら江戸前の煮切りや昆布締めなどの微妙さはなく、感激はなかった。値段設定からすると当然かもしれないしそれと比較するのは酷かもしれない。好意的に見るとこんな演出もあるんだと考える、あるいは誰かが書いていたように、鮨以外はいいかも。