野営車でいこう(VWT4版)

旧野営車エクスプローラ 2009〜2016年の記録

<span itemprop="headline">杉本博司~中之島から京都</span>







土曜日、瓢亭の蕎麦の後、中之島で開催中の杉本博司「歴史の歴史」展に行ってきた。彼のコレクションは「骨董」を超え、彼自身が「遺物」と呼ぶように、仏像や書画だけでなく月の石、巨大な化石まで広範に亘る。写真作品は太古と変わらぬ風景としての「海景」シリーズとカメラを使わず乾板に直接「放電場」を写し込んだシリーズ。それらを杉本氏自身の手により国立国際美術館の巨大空間を縦横無尽に使ってプレゼンテーションしている。「私のアートとは、私の精神の一部が眼に見えるような形で表像化されたものである。いわば私の意識のサンプル」というように、すべての遺物と作品をサンプルとして、意識の表像化をこの広い空間に彼自身が構築をしている巨大作品といってもいい。時に圧倒的な大きさと広い空間に包まれる浮遊感と、時に琥珀虫のような遺物の中に入り込んでいく宇宙観に浸りながら、ちょっとした悪戯にも付き合わされ、たっぷり楽しむことが出来た。


しかし、期待した三十三間堂の千体の千手観音を撮った「sea of buddah」の展示はなかった。そんな訳で、翌日の日曜、突然思いついて、本物を見るため、京都七条にある京都蓮華王院のその千体+一体の千手観音像を見に行ってきた。杉本氏の写真は全員の顔が見えるように少し高い位置からの俯瞰撮影で、しかも東側からの朝日を受ける限られた時間帯で撮っていて、この世のものとは思えないような写真だけれど、やはり本物はすごかった。下から見上げるので全員の顔は見えないものの、その巨大空間の荘厳さと圧倒的な迫力。信仰心のない人も思わず手を合わせて拝んでしまいそうになるくらい、一体の千手観音坐像とその左右に安置する千体観音立像の壮大さ。杉本氏が撮影した朝日を受けて黄金に光る時間帯であればなおさらすごいかもしれないと思ったのでした。