野営車でいこう(VWT4版)

旧野営車エクスプローラ 2009〜2016年の記録

<span itemprop="headline">映画「終戦のエンペラー」と「太陽」</span>



先週、「終戦のエンペラー」を見た。

私は1949年の戦後生まれだが、その時の日本は日本でない。アンティークショップでよく見かける、その頃盛んに作られ輸出されたブリキの玩具や陶器の底などに書いてある「Made in Occupid Japan」~「占領下の日本製」。終戦後、日本が主権を回復する1952年まで、占領下にあったのは7年間も続いていたことを改めて認識した。


そして、その間の昭和天皇のことを描いた映画が2本あって、どちらも日本映画ではない。「終戦のエンペラー」はアメリカ映画であり、マッカーサーの部下フェラーズが天皇の戦争責任を調査していくことでストーリーが展開、史実を元に映画化されている。アメリカ人から見たミステリアスな存在としての天皇を描いたこの映画の原点を探していたら、岡本嗣郎の著書「陛下をお救いなさいまし」、河井道、小泉八雲新渡戸稲造に行き着いた。一度読んでみると面白いかもしれない。






一方、もうひとつの昭和天皇を描いた映画はロシア人によって2005年に映画化された「太陽」。出演者以外は脚本家も含めてほとんどがロシア人他、イタリア・フランス・スイスの合作。こちらの方は、同じ時期の天皇の苦悩を描いた奇作ともいえる。2006年の公開時に銀座の映画館で見たが、改めて昨日、iTunes Storeのレンタルストリーミングでもう一度見てみると、ハリウッド映画とは全く異なる強烈に個性的な作品だと思った。独特の色調、全編に流れるバッハの無伴奏チェロ組曲5番、それにイッセイ尾形の描く昭和天皇の奇妙なリアリティが、ある種コミカルとも悲哀とも言えるような心象風景を作る。

両作品は、天皇マッカーサーとの会見という全く同じシーンを描きながらも、それは「羅生門」のアプローチのように、二人のそれぞれの全く違った視点から描いている。一方の主人公はマッカーサーの部下フェラーズであり、もう一方は天皇ヒロヒト。ただ、あまりにも「太陽」の印象が強烈だったので、先に見た「終戦の…」の時に様々に感じた印象が薄くなり、「太陽」の最後のシーンの緊張感と脱力感だけが残ってしまっていた。


ある種価値観の崩落という場面に立たされた時に、そこには様々なドラマが生まれる。
日本人には描くことのできなかった終戦天皇のことを知る上で、両作品ともいい映画だと思うけれど、どちらか選ぶとすると、まずは「戦場の…」になるし、もしその映画を映画館で見たのであれば、DVDかiTunesでもう一方の「太陽」を見るのをオススメします。


蛇足ですが、この両作品に出演してる日本人女優が桃井かおりさん。どちらもほんの少ししか出演シーンはないのだけれど、その存在感が作品にとてもいいスパイスになっていた。流石です!