野営車でいこう(VWT4版)

旧野営車エクスプローラ 2009〜2016年の記録

<span itemprop="headline">2日目~有田焼の街を訪ねて</span>


 長崎旅行2日目、前日ハウステンボスはほぼ制覇したのでレンタカーを借りて有田へドライブをすることにした。複雑な海岸線を持つ長崎県の最北部に位置するハウステンボスから佐賀県の有田周辺に点在する磁器の故郷は近く、ハウステンボスからのオプショナルツアーの半日コースがあり値段も手頃なので申し込んでみた。しかしその日にはツアーがなかったのでレンタカーを借りる事にした。レンタカーは半日も一日も値段は同じで、2日借りてもそれほど変わらず、二人分のバスツアー料金にプラス二千円もしない。しかも、翌日は長崎への移動があり、乗り捨てする場合、長崎のホテルのある思案橋からトヨタレンタカーまでは近い。そして公共交通機関よりタイムロスが圧倒的に少なくてすむ。

 有田までは1時間少しで到着。あまりコースは考えていない。有田だけでなく、車なので波佐見にも行ってみたい。ということで、最初に到着したのは有田の街並みの手前にある柿右衛門窯。日本で最初に磁器が作られた有田で、それまで藍一色の染付から赤絵と呼ばれる色絵を日本で最初に始めたと言われる。柿右衛門窯のギャラリーと展示室に入ると、展示室に、色絵の工程をわかりやすく実物で見せている展示があった。最初に呉須による染付けをして高温で焼成の後、色絵の絵付けをしてから低温で焼いていく。同じ有田焼でも緻密な鍋島様式に比べ、白地を生かし非対称な暖色系の花鳥図の柿右衛門様式。展示室には、柿右衛門と名乗るまでの歴史が書いてあったが、そこに17世紀初期、日本で初めてこの有田で磁器生産の始まった経緯が書いてあった。朝鮮出兵肥前の鍋島領主が日本に連れてきた朝鮮の陶工のひとり李参平が有田の泉山で白磁鉱を発見したことから始まった、という。しかし、その後に発見された天草の陶石へ変わったらしい。

 しかし、柿右衛門窯を後にして有田の街を目指し、車を停めた駐車場にあった地元の観光協会でもらった地図を見ていると、地図の端っこに小さく泉山磁石場とあった。これは是非見ておきたい。日本の磁器発祥の地の原点がそこにある。陶石採掘は天草へと変わったけれど、その後はまた再開、双方を混合もされることもあると聞く。場所がわかりにくかったので、有田町歴史民俗資料館に駐車して場所を聞くと、磁石場はすぐその裏手にあった。広大なその場所に行くと、「四百年かけてひとつの山を焼き物に変えた」と書いてあったが、なるほどと思った。足元を見ると小さな陶石がごろごろあったので、記念にひとつ拾った。

 駐車場に車を停めて、有田の古い街並みに並んでいるお店を見ようと歩きはじめた。ところが、その距離は相当あり、なかなか中心部にたどり着かない。諦めて駐車場に戻り、中心部の駐車場を探すと、地図に美術館があった。駐車場は広くはなかったが、とりあえずそこに駐車して小さな美術館に入った後、その周辺の店を散策。雰囲気のある店がいくつもあったが、延々と続く街並みのどこを目指せばいいのか検討がつかない。その時ふと雰囲気のある古い建物を偶然発見した。それは深川製磁という窯元の店だった。後でわかったことだけれど、その近くにある有名な香蘭社の兄弟が始めた会社だった。有田焼は多くを海外への輸出をしていただけあって、その雰囲気のある古い本社の建物の筋向いには歴史的な洋館があり、裏の工場も含めてその会社の一角は歴史的なセットのようだった。店内には、柿右衛門の店ほど高額でないものも多く、趣味の良い良質の商品が多く並んでいた。しかも広い本社駐車場があったので、美術館の駐車場に戻って、連日歩き疲れて待っていたかみさんと移動。そのお店のアウトレットのコーナーで掘り出し物を見つけたかみさんは、いっぺんに疲れが吹っ飛んだようだった。

 帰りに、長崎寄りの波佐見にある、柳宗理の醤油差しで有名な白山陶器に寄ってみたが、ギャラリーは4時で閉館していた。波佐見窯は元々、厚手でシンプルな柄の安価な庶民向けの磁器が多かったらしく、有田のような街並みもなかった。今日はちょうどいい一日ドライブコースとなったが、オプショナルバスツアーはもっと短時間でここまでは回れず、結果的にはレンタカーにしてよかった。

 中国の景徳鎮を追いかけた日本の陶磁器の歴史、やがて師匠を追い越し、ヨーロッパへの輸出はマイセンなどへ多大の影響を与えた。当時、日本で唯一のこの磁器生産地は鍋島藩の管理の下、職人は隔離されその技術は門外不出、全国の憧れの的だったらしいが、数十年後に瀬戸のスパイが潜入し全国へ磁器の窯を広げたという話も面白い。毎年、春に万博公園で開催される有田焼の陶器市だが、ここ有田で陶器市の歴史は長く、毎年品評会的な性格を持ち有田焼の発展に貢献したそうだ。今もゴールデンウイークに有田で開催される恒例の陶器市、一度来てみたいです。