毎年、我が家の小さな植え込みに春水仙が黄色に咲き始めると、花の季節が到来する。しかしその短い花の命が終わる頃、少し遅れて葉を伸ばしていた紫蘭の小さな蕾がふくらみ、やがて一気に可憐な白い花になる。小さくてもミステリアスな蘭の装いをしている。
そしてやがて小さな脇役たちの出番が終わる頃、一年に一度の、主役つるバラの登場となる。絢爛豪華なこの主役は、気品ある甘い香りで周囲を包む。もう、植えてから何年になるだろうか。南東の日差しを浴びて、つるは今では木のように太く枝を支え、今年は家の正面から直角に曲がった壁面まで延び、キッチンの窓に達し恰好のグリーンカーテンにもなっている。しかし、咲いた大量の花はどんどん落下していくので、毎日その処理が大変だ。しかし、次々に咲き乱れた主役たちにもフィナーレが訪れ、やがてすこしずつその華麗な姿を消していく。
そして最後の一輪がステージを去る頃には雨の季節が近づいている。花が消え緑一面になった壁の下に、控えめな額紫陽花が咲き始める・・・